瀬戸内に浮かぶ小さなアートの島 豊島
豊島とは瀬戸内海、小豆島と直島の間に浮かぶ島であり、
読みは「とよしま」や「としま」ではなくて「てしま」だ。
島の西端で行われた産業廃棄物の不法投棄の問題で、
一時は産廃の島として全国に知られていたそうだが、
現代アートの国際芸術祭「瀬戸内国際芸術祭」の開催によって、
今では芸術の島としての名の方が通っているだろう。
前回は小豆島のアート作品を紹介したが、
今回は、心に響く豊島のアート作品を紹介しよう。

1.先鋭と古格の融合 イル・ヴェント
イル・ヴェントとは、家浦集落の海岸沿いの古民家を改装したカフェレストラン、
そして、ドイツの芸術家「トビアス・レーベルガー」のアート作品である。
イル・ヴェント(IL Vento)の意味はイタリア語で「風」。
瀬戸芸で付けられた作品名は「あなたが愛するものは、あなたを泣かせもする」。
いったい、どういう意味が込められているのだろう。
外観は古格の民家なのに入口はまるでSF。
入口を見ただけで、イル・ヴェントに惹き込まれてしまう。

そして一歩中に入ると、度胆を抜かれる内装。
ストライプ・水玉など様々な模様が壁一面どころか、天井や床、
テーブルやイスにまで施されている。

落ち着いて食事することは出来ないかもしれないが、
豊島に訪れたら、必ず立ち寄りたいカフェだ。
2.振動覚に響く心臓音のアーカイブ
豊島の北西に位置する唐櫃浜に建てられた「心臓音のアーカイブ」。
ここは世界中の人の心臓音を収蔵し、それらを聴くことが出来る小さな美術館、
そして、クリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーション作品だ。
正直に言って、最初は心臓の音なんか聴いてどうすんだと思っていたが、
ごめんなさい、すげぇや、ここ。
インスタレーション空間は真っ暗闇。
その中で、空気が振動するほどの心臓音が空間中に響く。
そして、鼓動に合わせて部屋の中心の電球が灯り、室内が薄暗く照らされる。
まるで、人体に入り込み心臓の鼓動を聴いているかようだ。
鑑賞料510円、心臓音のアーカイブ料は1540円。
髙いと思うか安いと思うかは人それぞれだが、体感して後悔することはないアート作品と断言する。

3.空間を味わう 豊島美術館
豊島美術館は唐櫃集落の丘の上、棚田の一画に建設された美術館だ。
唐櫃の丘陵を登る道路は棚田と瀬戸内の海を望む好展望スポット。
その道路から見える白い水滴型の巨大コンクリート・シェルの建造物が豊島美術館である。

コンクリート・シェルのインスタレーション空間の天井には2つの大きな穴が開き、
外部の光、そして、雨天の時には雨滴をその内部に取り込む。
床の小さな孔からは水が湧き出ていて、水滴となって動き出し、集まり、塊となって
一番大きな水滴の集合である「泉」に流れ落ちる。水の動きには決まった形は無い。
ここの空間は季節、天候、時間によって無限にその表情を変える。
一日中いても、全然飽きない不思議な空間だ。
鑑賞料1540円。
髙いと思うか安いと思うかは人それぞれ...いや高い。
そう、決して安くはないが、この空間にはそれだけの価値がある。

4.瀬戸内海を眺望する随一の展望 豊島檀山
豊島のアート作品は確かに素晴らしいが、豊島本来の自然の美しさを忘れてはいけない。
最後に、豊島の最高峰「檀山」から望む最高の眺望を紹介しよう。
檀山には2つの展望台がある。
1つは、標高345mの山頂に建てられた「檀山四望台」。その展望は360°の大パノラマだ。
東方を望むと蒼い海に浮かぶ小豊島と小豆島。とても心地が良い場所だ。

山頂の南側、断崖の崖縁に建てられた檀山展望台からの展望も素晴らしい。
湖のように穏やかな海の先には男木島、そして、四国の屋島、五剣山までを望む。

檀山は、島民が「瀬戸内随一の展望」と豪語する、豊島自慢の絶景スポットだ。
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